システム開発の上流工程とは〜流れや下流工程との違い、成功のポイント〜

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システム開発の上流工程とは〜流れや下流工程との違い、成功のポイント〜

システム開発の上流工程は、システム開発の成功を左右する基盤となる部分です。本記事では、システム開発の上流工程について詳しく解説し、その重要性や具体的な流れ、下流工程との違い、失敗事例、成功のポイント、必要なスキル、そして役立つ資格について紹介します。システム開発の依頼をスムーズに進めるために役立てば幸いです。

 

 

システム開発の上流工程とは

システム開発の上流工程とは、システム開発プロジェクトの初期段階で行われる工程を指します。この工程には、企画、要件定義、基本設計、見積もり、詳細設計などが含まれます。上流工程の目的は、システムの全体像を明確にし、開発の方向性を定めることです。

上流工程はシステム開発において非常に重要です。なぜなら、この段階での計画や設計が後の開発工程に大きな影響を与えるからです。上流工程での不備や誤りは、後のシステム開発工程での手戻りやコスト増加、スケジュール遅延などのリスクを高めます。そのため、上流工程での綿密な計画と正確な要件定義が、プロジェクト全体の品質と成功を左右する鍵となります。

 

上流工程の流れ

システム開発の上流工程に含まれる工程を紹介していきましょう。

 

企画

企画工程では、システム開発の目的や目標を明確にし、開発プロジェクトの全体像を描きます。市場調査や競合分析を行い、システムの必要性や期待される効果を評価します。

 

見積もり

企画内容をもとに、システム開発に必要な費用や開発期間を算出します。

 

要件定義

要件定義工程では、システムに必要な機能や性能、条件などを具体的に洗い出します。また、決定した仕様を文書化することも多いです。

 

基本設計

システム開発の基本設計とは、開発するシステムの実際の画面や操作時の仕様などを作成・検討する工程です。要件定義で検討した内容や条件を満たしているか確認することが大切です。

 

詳細設計

システム開発の詳細設計では、基本設計の内容をもとに、開発するシステムの内部仕様(データベースの設計など)を検討したり、必要な環境を整備したりします。

 

上流工程と下流工程の違い

システム開発の上流工程に対して「下流工程」があります。ここでは、上流工程と下流工程の違いについて見ていきましょう。

上流工程はシステム開発において非常に重要です。なぜなら、この段階での計画や設計が後の開発工程に大きな影響を与えるからです。上流工程での不備や誤りは、後のシステム開発工程での手戻りやコスト増加、スケジュール遅延などのリスクを高めます。そのため、上流工程での綿密な計画と正確な要件定義が、プロジェクト全体の品質と成功を左右する鍵となります。

 

下流工程とは

システム開発の下流工程とは、上流工程で決まった要件や仕様をもとに実際にシステムを構築し、テストやリリースを行なう工程を指します。

 

下流工程の流れ

システム開発の下流工程には、一般的に以下が含まれます。

 

開発

開発工程では、上流工程で決まった仕様をもとにプログラミングを行い、システムの各機能を実装します。

 

テスト

テスト工程では、開発したシステムに不具合がないかを確認します。単体テスト、結合テスト、システムテストなどのさまざまなテストを実施し、システムの品質を確認します。

 

リリース

テストが完了したら、システムを公開します。この工程を「リリース」といいます。またリリース後も、運用や保守を通じてシステムの安定稼働をサポートし、必要に応じて改善やアップデートを行ないます。

 

上流工程と下流工程の違い

システム開発の上流工程と下流工程の違いとして、以下が挙げられます。

 

作業内容の違い

システム開発の上流工程は計画や設計が中心ですが、下流工程は実装やテストが中心です。

 

担当者の違い

システム開発の上流工程と下流工程は作業内容が異なるため、携わる担当者に違いがあります。

上流工程では、開発するシステムの内容を分析する「ビジネスアナリスト」や、技術的な設計方針を検討する「技術リーダー」などがおもな業務の担当になることが多いです。

一方、下流工程では、実際にプログラミングを行なう「エンジニア」や、開発したシステムをテストする「テスター」が中心となる傾向があります。

 

必要なスキルの違い

上流工程では計画立案や要件定義のスキルが求められ、下流工程ではプログラミングやテストのスキルが求められます。

 

上流工程 下流行程
作業内容 計画・設計 実装・テスト
担当者 ビジネスアナリスト技術リーダー エンジニアテスター
必要なスキル 計画立案や要件定義のスキル プログラミングやテストのスキル

 

上流工程の失敗事例

システム開発の上流工程がうまくいかないと、プロジェクト全体に大きな影響を及ぼします。以下に、上流工程の失敗によるシステム開発の失敗事例を紹介します。これらの失敗事例を避けるためにも、上流工程でしっかりとした基盤を築くことが大切です。

 

開発スケジュールの遅延

システム開発の上流工程が不十分だと、下流工程で仕様変更や追加要件が発生し、開発スケジュール全体が遅延することがあります。これにより、リリース時期を遅らせる必要があるなどのリスクが高まります。

 

開発コストの増加

上流工程での不足により下流工程で追加要件が発生すると、その分の工数が追加されるため、見積もり金額よりも開発費用が上振れることがあります。場合によっては予算を超過することもあるため、注意が必要です。

 

リリース後のシステムトラブル

システム開発の上流工程で定義や設計に不備があると、システムトラブルが発生することがあります。

たとえば、想定よりも実際の利用者が極端に多い場合、サーバーダウンのようにシステムが不安定になることがあります。また、仕様や条件が曖昧なままリリースすると、想定外の挙動が発生し、クレームなどにつながってしまうことも少なくありません。

その結果、修正対応が必要となり追加費用がかかる場合もあります。

 

上流工程を成功させるポイント

前述のようなシステム開発の失敗を防ぐために、どのようなポイントに気をつけると良いでしょうか。システム開発の上流工程を成功させるためのポイントを以下にまとめました。

 

開発するシステムの要望を明確にする

システム開発会社へ相談する際は、開発するシステムの要件を明確に伝えましょう。

開発プロジェクト開始までに、開発するシステムの利用者や関係者の要望をヒアリングして必要な機能や前提条件を整理しておくと、上流工程がスムーズになります。

 

システム開発会社と密にコミュニケーションをとる

システム開発の上流工程では、システム開発会社と定期的なミーティングを実施し、双方の認識をすり合わせることが多いです。これを実施せずにシステム開発へ丸投げをしてしまうと、上流工程で認識齟齬が発生し、後の開発工程に影響が出やすくなります。

システム開発会社とのコミュニケーションを密にとり、課題の認識やすり合わせをすることが大切です。

 

開発ドキュメントなどを丁寧に確認・フィードバックする

上流工程で作成される開発ドキュメント(要件定義書、設計書、見積書など)を丁寧に確認し、必要に応じてフィードバックを行ないましょう。資料の内容に目を通し、疑問点や不明点を解消することで、開発の品質を高めることができます。

 

上流工程の成功に必要なスキル

システム開発の上流工程をスムーズに進めるためには、以下のスキルが重要です。これらのスキルを身につけることで、システム開発プロジェクト全体の品質や効率の向上につながります。

 

IT知識・設計スキル

システム開発の基礎知識や設計スキルは、上流工程での要件定義や基本設計の際に不可欠です。システム開発を依頼する場合は、システム開発の流れを理解することや、要件定義書の作成方法・記載内容などを押さえておき、システム開発会社に適切に依頼できるスキルが大切です。

 

開発ドキュメントや見積りを確認するスキル

上流工程では、設計書などの開発ドキュメントや見積りが作成されます。これらを正確に確認し、内容を理解し、フィードバックを行なえるスキルがあると良いでしょう。

 

コミュニケーションスキル

システム開発の上流工程では、開発するシステムの利用者や関係者、開発チームとコミュニケーションをとりながら、必要な機能や性能を整理することが大切です。

要望を的確にヒアリングし、分かりやすく伝えることや、質問に対して迅速に回答するなどのコミュニケーションスキルを持つことで、開発プロジェクトの進行が円滑になります。

 

システム開発の上流工程に役立つ資格

システム開発の上流工程を成功させるための専門的な知識やスキルを習得するために、資格の習得も役に立つでしょう。以下に、システム開発の上流工程の理解に役立つ資格を紹介します。

 

応用情報技術者試験

応用情報技術者試験は、ITの基礎知識から応用まで幅広くカバーする資格です。システム開発の上流工程に必要な要件定義や設計のスキルを身につけることができます。

 

プロジェクトマネージャ試験

プロジェクトマネージャ試験は、プロジェクト管理の専門知識を問う資格です。プロジェクトの計画、進行管理、リスク管理など、上流工程でのプロジェクトマネジメントに役立つスキルを習得できます。

 

システムアーキテクト試験

システムアーキテクト試験は、システムの設計や構築に関する高度な知識を問う資格です。システム全体のアーキテクチャ設計や技術的な課題解決に役立つスキルを身につけることができます。

 

オラクルマスター

オラクルマスターは、データベース管理に関する専門資格です。データベース設計や運用に関する知識を深めることで、システム開発の上流工程におけるデータベース設計や管理に役立ちます。

 

まとめ

 

  • システム開発の上流工程とは、システム開発プロジェクトの初期段階で行われる工程で、一般的には「企画」「要件定義」「基本設計」「見積もり」「詳細設計」が含まれる
  • システム開発には上流工程と下流工程があり、上流工程は開発するシステムの計画設計が中心であることに対して、下流工程は実装・テストが中心である
  • 上流工程が曖昧になることにより、開発スケジュールの遅延、開発コストの増加、リリース後のシステムトラブルなどにつながるリスクがある
  • 上流工程を成功させるポイントは「要望を明確にする」「システム開発会社と密にコミュニケーションを取る」「ドキュメント確認・フィードバックを丁寧にする」である