システム開発契約書の種類と注意点|成功するプロジェクトの秘訣とは?

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システム開発契約書の種類と注意点|成功するプロジェクトの秘訣とは?
  • 「システム開発を依頼したいが契約書の書き方がわからない」
  • 「契約書が重要なのが理解しているが、必要な契約書の種類がわからない」
  • 「対等な契約書が作成できるか不安」

 

システム開発を行いたいと考えた時、上記のような疑問が生じるかと思います。

システム開発における契約書は、プロジェクトの成功において重要な役割を果たします。

契約書の作成には、必ず明記すべき項目がいくつかあります。契約書の内容が曖昧だと、プロジェクトが円滑に進まず、トラブル発生の原因になり得ます。

この記事では、システム開発契約書の種類と留意点を解説します。依頼通りのシステムを納品してもらえるよう、正しい契約書の作成方法を理解しておきましょう。

 

 

システム開発における契約書とは?

システム開発における契約書は、開発の範囲や要件、納期、支払い条件など、プロジェクトを進めるうえで重要な事項を明確に定めるための文書です。

システム開発は一般的な商品と違って形がなく、依頼者と開発者の間で認識の齟齬が起きやすいことから、システム開発のプロジェクトには多くのリスクや課題が存在します。

プロジェクトを適切に管理・解決するには、契約書の作成が欠かせません。開発者と依頼者の間で契約書を作成することで合意と共通理解を確立し、プロジェクトの目標達成に向けた方向性を明確にします。

さらに、契約書には品質保証や知的財産権の取り扱いなど、プロジェクトの安定性と信頼性を担保する役割も担います。

そのため、システム開発を依頼する際は、契約書の作成方法や明記すべき項目を理解することが重要です。

 

システム開発の契約書で必要な項目

ここからは、システム開発の契約書で必要な項目を解説します。まずは、開発内容に関わらず必ず必要な項目を見ていきましょう。

 

一般的な項目

システム開発の契約書には、依頼内容に関わらず以下の項目を必ず記載します。

 

システム開発の契約書で一般的な項目
項目 詳細
契約の当事者と日付 開発業者(受注側)と依頼者(発注側)の両当事者の基本情報と契約締結の日付
契約の目的 開発するシステムの開発目的や利用用途
システムの範囲と成果物 依頼するシステムの開発範囲や具体的な成果物(ソフトウェア、ドキュメント、ハードウェアなど)の情報
納期とマイルストーン システム開発の納期とプロジェクトの進捗状況を確認する基準
報酬と支払い条件 システム開発に必要な具体的な報酬金額や支払いスケジュール、支払い方法など
品質保証と保証期間 品質管理やバグ修正、保証期間の詳細な条件や対応範囲
知的財産権 開発したシステムの権利帰属や利用範囲に関する合意内容
契約解除条件 契約違反や重大な問題が発生した場合の対処方法や契約解除に関する手続き方法を規定

 

必要応じて追記される項目

システム開発の契約書は、プロジェクト内容や当事者の要件に応じてカスタマイズされます。その場合、以下のような項目も契約書に含まれる場合があります。

 

依頼内容に応じて必要な項目
項目 詳細
機密保持 発注側がシステム開発業者に提供する機密情報の取り扱いに関する規定
情報の秘密保持や機密情報の取り扱い方法が明示し、情報漏洩や競合他社への情報提供を防止する
変更管理 システム開発の進行中に仕様や要件が変更された場合に備えて、変更管理の手続きや費用の取り扱いに関する条項
紛争解決 もし紛争が発生した場合に、仲裁、調停、裁判所の管轄など紛争解決方法を明確にするための条項

 

契約書の種類

ここでは、システム開発の契約書の種類を解説します。

システム開発の契約書には、依頼内容に応じて適切な契約書の種類が存在します。契約書の種類として、主に以下の3パターンが挙げられます。

 

システム開発の契約書の種類
  • 基本契約・個別契約
  • 一括契約・多段階契約
  • 請負契約・準委任契約

 

各契約書の内容を詳しく見ていきましょう。

 

基本契約と個別契約

基本契約は、発注側と受注側の間で締結される契約内容全体に関わる契約書です。具体的には、開発作業の範囲や責任の分担、報酬の支払い条件などが取り決められます。言い換えれば、開発内容に関わらず契約自体の大まかなルールや原則を定める契約書となります。

個別契約は基本契約の内容を踏まえて、システム開発の具体的な業務内容や詳細情報をまとめた契約書です。システムの設計内容やプログラミング方法、テスト内容など、個別の作業や開発フェーズに関連する契約内容は個別契約に記載されます。

個別契約は、基本契約を踏まえて締結されることが一般的です。そのため基本契約には、個別契約の締結条件や変更に関する手続き、契約解除条件なども明記する必要があります。

つまり、基本契約と個別契約を組み合わせることで、プロジェクトの進行やリスク管理を効果的に進めることが可能です。

もしプロジェクト開始時に基本契約と個別契約が同時に締結できない場合、以下の方法を取る場合もあります。

 

  • 計画段階で基本契約を締結し、プロジェクトの全体像が明確になった時点で個別契約を締結する。
  • プロジェクトの見通しが付きにくい場合は、開発フェーズ毎に個別契約書を作成する。

 

一括契約と多段階契約

一括契約とは、システム開発全体を一つの契約として締結する契約形態です。契約の締結時点で、システム開発の全工程や業務内容を包括的に取り決めます。

一括契約では、システムの設計・開発・テスト・導入・保守などの全ての作業が一つの契約書に明示されます。プロジェクトの責任所在や報酬、納期などを一括して取り決めるため、システム開発全体の統一性とプロジェクトの継続性を確保することが可能です。

一方、多段階契約は、システム開発を複数の段階に分けて契約を締結する契約形態です。システム開発の段階ごとに別々の契約書を締結します。

例えば、基本設計・詳細設計・プログラミング・テスト・導入など、個々の開発フェーズごとに契約書を作成します。多段階契約では、プロジェクトの進行状況や成果物の評価に応じて契約を更新・継続できるため、柔軟な契約管理や変更への対応が可能です。

プロジェクトの性質や要件によって異なりますが、一般的に開発の範囲や要件が明確で変更が少ない場合は一括契約が適しています。一方、開発の進行に伴って仕様や要件が変化しやすい(不確定要素が多い)場合や柔軟性が求められる場合は、多段階契約が適しています。

 

請負契約と準委任契約

請負契約は、システム開発業者が開発作業全体を受け持ち、成果物の完成を約束する契約形態です。開発業者は自らの経験や専門知識を活かし、リスクや責任を負ってプロジェクトを進めます。

請負契約を締結する際は、以下のポイントに留意することが重要です。

 

  • 仕様の明確化
  • 契約書に具体的な開発の要件や成果物を記載し、必要な機能や要件を明確にすることで、開発業者との認識のズレを防ぐ。
  • 納期とマイルストーン
  • 開発の進捗状況を把握するためのマイルストーンと納期を設定し、プロジェクトの遅延を防ぐ。
  • 品質保証と保証期間
  • 品質保証やバグ修正に関する項目を明記する。

 

一方で、準委任契約は、一部の開発業務を特定のシステム開発業者に依頼する契約形態です。特定の技術や専門知識を持つ業者に一部の開発作業を委託する場合に適しています。

準委任契約では、以下のポイントに留意することが重要です。

 

  • 作業範囲の明確化
  • 受託者に依頼する業務の範囲や詳細を明確に記載する。開発業者とのコミュニケーションを通じて、期待する成果物や要件を正確に伝えることも重要。
  • 業者の選定と管理
  • 過去の実績や技術力、信頼性などを評価し、プロジェクトの成功に貢献できる業者を選定する。また、契約期間中のコミュニケーション方法や作業の進捗管理方法にも注意。

 

システム開発契約書の雛形・テンプレート

ここまで、契約書に記載すべき項目や契約書の種類を解説しました。ただ、具体的な契約書のフォーマットがあると作成する際にイメージが付きやすいですよね。

そこで、システム開発の契約書作成時に活用できる雛形・テンプレートを2種類紹介します。

 

経済産業省の情報システム・モデル取引・契約書

システム開発の契約書で活用できる雛形・テンプレートの1つ目は、経済産業省が2007年に公表した「情報システム・モデル取引・契約書」です。

この契約書は、情報システムの開発・導入プロジェクトにおける契約書のモデルを提供するために、主にウォーターフォール型を想定して作成されています。情報システムの受注側(業者)と発注側(顧客)の双方の利益を考慮し、公平かつ適切な契約関係を形成するための参考資料として提供されています。

出典:経済産業省「情報システム・モデル取引・契約書

 

独立行政法人情報処理推進機構の情報システム・モデル取引・契約書

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、情報処理の推進や情報セキュリティの向上を目指し、情報システムの開発・保守に関わる業務を支援する組織です。

IPAで提供されているモデル契約書は、経済産業省のモデル契約書を再検討しており、2020年4月の改正民法に影響を受ける点も反映したものも公開されています。

またIPOでは、アジャイル型を考慮した「情報システム・モデル取引・契約書(アジャイル開発版)」も公開しています。

出典:独立行政法人情報処理推進機構「情報システム・モデル取引・契約書

 

契約書において確認するべきチェックポイント

システム開発の契約書を作成する際には、以下のポイントに注目することが重要です。

 

システム開発の契約書作成時のチェックポイント
  • 仕様の明確化
  • 納期とマイルストーン
  • 支払い条件
  • 品質保証と保証期間
  • 知的財産権
  • 契約解除条件

 

各チェックポイントを1つずつ確認していきましょう。

 

仕様の明確化

どのようなシステム開発を依頼したいか、開発するシステムの具体的な要件や機能、利用環境などが明確に記載されているかを確認しましょう。開発側と受注側が共通の理解を持つために、必要な情報が含まれていることが重要です。

システム開発のトラブルの多くは、開発内容の認識齟齬です。開発して欲しいシステムが依頼者側に明確に伝わるよう、契約書にもシステム開発の使用を必ず明記してください。

また、仕様変更が発生した場合に備えて、修正依頼や費用負担などの対応方法も記載するのがおすすめです。

 

納期とマイルストーン

システム開発の仕様が明確になったら、具体的な開発プロセスと納期を明記します。プロジェクトの進行状況を常に把握し、遅延や逸脱を予防することが可能です。

また、納品方法も明記してください。CD-ROMやサーバーアップロード、開発者がPCに直接インストールするなど、納品方法によって対応の仕方も変わるので、希望の納品方法も明確にしておきましょう。

 

支払い条件

一般的に、システム開発の費用を支払うタイミングは、システム完成もしくは労務完了時の2種類に分けられます。特に後者はシステムが完成したとしても、必要な労務がすべて完了することが条件となっています。

支払い条件が明記されていないと、想定外のタイミングで請求される可能性があります。システム開発の費用は高額である場合があるので、支払い方法や時期、契約違反に対する罰則などが適切に取り決められているかを確認しましょう。

 

品質保証と保証期間

システム開発は、依頼したシステムが納品されて終わりではありません。想定していた仕様通りに作られており、要求した機能がちゃんと使える必要があります。

そのため、契約書には納品されたシステムの品質保証に関する項目も必要です。保証条件や保証期間だけでなく、万が一保証されていない場合の対処方法も明記しておきましょう。

 

知的財産権

システム開発では、知的財産権に関するトラブルも多く発生しています。例えば、依頼者側が納品されたシステムを自由に使えるよう、関連会社にシステムを無断で複製してしまうと、開発者側の技術・ノウハウが外部に漏洩する可能性があります。

開発されたシステムの知的財産権の所在が曖昧なままだと、損害賠償請求を求められたり法的処置を取られたりする可能性があります。納品後のトラブルも防ぐためにも、権利の帰属先や取扱方法をしっかり明記しておきましょう。

 

契約解除条件

万が一、契約違反や重大な問題が発生した場合、これ以上の損害を被らないためにも契約解除条件を記載しておくことも重要です。

契約解除はあくまで最終手段になるため、契約解除が必要な状況にならないためにも、ここまで解説したチェックポイントをしっかり明記しておくことを心がけてください。

上記をチェックポイントをすべて抑えることは難しいため、必要に応じて弁護士や専門家のアドバイスやサポートを受けることもおすすめします。

 

まとめ

この記事では、システム開発における契約書の必要項目や作成時のチェックポイントを解説しました。

システム開発の契約書を作成する際は、以下の内容を理解しておきましょう。

 

システム開発の契約書のまとめ
  • システム開発の契約書は、依頼内容の透明性と双方の合意形成、リスク管理とトラブル回避、品質確保と保証などに役立つ
  • 契約書作成には仕様と要件の定義、納期とマイルストーンの設定、支払い条件や知的財産権の明確化、契約解除条件の設定が重要
  • 契約書は依頼内容や締結先によって作成する種類が異なる
  • 自社で契約書の作成が難しい場合は、モデル契約書の活用がおすすめ

 

システム開発の依頼時に明確な契約書を作成できれば、トラブルを未然に防げるだけでなく、要求通りのシステム開発を円滑に進めることが可能です。

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契約書作成で気になることや不明点など、ちょっとした質問だけでもかまいません。ぜひ一度当社にお問い合わせください。