システム開発を依頼する際、品質管理のポイントや開発会社の方針を理解することは、開発プロジェクトの成功に不可欠です。
この記事では、システム開発における品質管理とは何か、具体的な手法、押さえておくべきポイントを説明します。
システム開発の品質管理について知識を深め、スムーズなシステム開発を目指しましょう。
INDEX 目次
まずは、システム開発における品質管理の概要、品質管理が行われない場合のリスク、品質保証との違いなどを説明します。
システム開発における品質管理とは、開発プロセス全体を通じてシステムの品質を確保し、維持するための活動を指します。
具体的には、計画、測定、分析、評価、改善、保証といった一連のプロセスを通じて、システムに求められる品質基準を満たすことを目指します。
品質管理により、以下のような効果を期待できるといえるでしょう。
品質管理を行うことで、開発中や運用中に発生する不具合を早期に発見・修正でき、修正コスト削減削減につながります。
高品質なシステムを提供することで、システムの利用者の期待に応え、顧客満足度を高めることができるでしょう。
システムの利用者が安心してシステムを利用できることにより、システムへの信頼性の向上につながります。
品質管理を徹底することで、システムそのものや、システムを提供する企業の競争力を強化します。
品質管理を行わない場合、システムの不具合や障害が頻発し、評判や信頼を損なうリスクがあります。品質管理はこれらのリスクを最小限に抑えるための重要な手段です。
開発するシステムの品質管理が不十分である場合、以下のようなリスクが発生する可能性があります。
開発段階での不具合を見逃すと、運用開始後に修正が必要となり、修正コストが大幅に増加します。特に、運用中のシステムに重大な不具合が発生すると、緊急対応が必要となり、予算やスケジュールに大きな影響を与えます。
品質の低いシステムは顧客満足度を低下させます。これにより、顧客の信頼を失い、新規顧客の獲得やリピートにつながりにくくなることがあります。
システムの不具合や障害が頻発すると、利用者がシステムを信頼できなくなる恐れがあります。これにより、離脱やクレームが増加し、企業の評判に悪影響を及ぼす可能性もあるでしょう。
品質管理が不十分だと、競合他社に対して劣位に立たされる可能性があります。高品質なシステムを提供できない企業は、市場での競争力を失い、ビジネスの成長が阻害される恐れもあります。
システムの不具合が原因で顧客に損害を与えた場合、法的責任を問われる可能性があります。特に、データ漏洩やセキュリティ侵害が発生すると、企業は法的措置や罰金を受けるリスクがあります。
品質管理と似た言葉に「品質保証」があります。どのような違いがあるのでしょうか。
品質管理は、開発するシステムの品質維持・向上に必要なプロセス全体を示すことに対して、品質保証は品質管理のプロセスの一部であり、品質管理が効果的に機能していることを証明する役割を担います。
品質管理と品質保証の違いを以下にまとめました。
品質管理 | 品質保証 | |
---|---|---|
目的 | システムの品質維持・向上 | システムが品質基準を満たしていることの保証 |
アプローチ | 日常的な管理活動やプロジェクト進行中の具体的な作業に焦点を当てる | 監査やレビュー、テストを通じてプロセスや手順の適切性を確認する |
役割 | 品質の測定、分析、改善 | 品質管理活動の効果確認、信頼性の提供 |
システム開発における品質管理にはさまざまなプロセスがあります。具体的なプロセスと、各開発工程でどのプロセスを実施するかについて説明します。
品質管理は「品質計画」「品質測定」「品質分析」「品質評価」「品質改善」「品質保証」の6つのプロセスに分けることができます。
品質計画 | 品質測定 | 品質分析 | 品質評価 | 品質改善 | 品質保証 |
それぞれのプロセスの概要を紹介しましょう。
品質計画は、システム開発プロジェクトの初期段階で品質目標を設定し、それを達成するための具体的な計画を立てるプロセスです。
具体的には、不具合や動作不良の確認・報告・改善方法や手順、修正・検証のスケジュールが含まれます。また品質に関する要件、リスク管理の計画も策定します。
品質測定では、開発するシステムの品質を定量的に評価するための指標や基準を策定し、計測します。
定量的な指標や基準の具体例としては、不具合の発生頻度、応答までにかかる時間、システム利用者からの定量評価(例:5段階評価)などがあります。
品質分析は、品質測定の結果を分析し、課題や改善策を検討するプロセスです。
品質評価は、品質分析の結果にもとづいて、システムの品質が目標に達しているかを評価するプロセスです。
品質評価の結果は、次のプロセスである品質改善に活用します。
品質改善は、品質評価の結果をもとに、品質を向上させるための具体的な対策を実施するプロセスです。具体的には、修正やテストの実施などが含まれます。
品質保証には、監視やシステム変更時のバージョン管理などが含まれます。品質管理のプロセス全体において、システムが一貫して高い品質を維持できるようにするためのプロセスです。
システムの開発工程は、大きく「要求・要件定義」「設計・開発」「テスト(単体・結合・総合・受け入れテスト)」「リリース」に分けることができます。
そして、これらのシステム開発の工程のなかで、先ほど紹介した品質管理のプロセスを実施します。
ここでは、システム開発の工程と品質管理のプロセスを対応させながら、各開発工程においてどのような品質管理を行なうかを説明します。
要求・要件定義の工程では、システム開発の依頼者へのヒアリングを通じて、開発したい機能や品質における期待などの要件を策定し、文書化します。
この工程で品質計画や測定基準を策定することにより、後の工程での品質管理が容易になります。
品質計画 | 品質測定 | 品質分析 | 品質評価 | 品質改善 | 品質保証 |
設計工程では、要求・要件定義で策定した期待を満たすための実装方針やシステムの構造を検討し、文書化します。
この工程で策定した内容が、品質計画で定めた内容や測定基準を見たいしているかを確認することが大切です。
また、実際の開発(プログラミング)を進めながらコードレビューやテストを実施し、品質測定などを行なう場合もあります。
品質計画 | 品質測定 | 品質分析 | 品質評価 | 品質改善 | 品質保証 |
テストの工程では、機能ごとに確認する単体テスト、機能同士の連携を確認する結合テスト、システム全体を確認する総合テストなどがあります。
テストによって得た結果を分析・評価し、不具合の修正を繰り返します。
品質計画 | 品質測定 | 品質分析 | 品質評価 | 品質改善 | 品質保証 |
テスト工程の最終段階である受け入れテストでは、システムの依頼者や利用者が、利用者の目線でテストを実施します。
開発したシステムが要求を満たしていることを確認し、最終的な品質保証を行います。
品質計画 | 品質測定 | 品質分析 | 品質評価 | 品質改善 | 品質保証 |
各工程で適切な品質管理プロセスを実施することで、システムの品質を維持し、プロジェクトの成功を目指します。
システム開発の品質管理において重要なポイントを、発注者と開発者それぞれの視点から見ていきましょう。
発注者がシステム開発の品質管理において意識すべきポイントは、以下のとおりです。
システム開発の初期段階で、要件を明確に伝えましょう。開発チームが正確にニーズを理解することにより、適切な仕様を検討し、開発を進めることができます。
また、要件に見落としがあると、後々の開発過程で問題が発生し、品質の欠如につながる恐れがあります。システム開発会社から提供された資料に要望の抜け漏れがないか、確認しましょう。
要件に関する詳細はこちら
システム開発の品質管理には、システムの依頼者と開発者双方の協力が不可欠です。
このため、システム開発会社に丸投げするのではなく、定例への参加、開発の進行状況の把握、システム開発会社からの質問への回答、必要な資料やデータの提供、開発されたシステムの確認などを行ないましょう。
開発者がシステム開発の品質管理において意識すべきポイントは、以下のとおりです。
品質マネジメントの基本原則を遵守することは、システム開発において欠かせません。これには、顧客満足の追求、継続的な改善、全員参加の品質管理などが含まれます。
プロジェクトの初期段階で、品質指標値や品質基準を明確に設定することが重要です。これにより、開発チーム全体が同じ目標に向かって進むことができ、品質の一貫性が保たれます。
品質を定量的に分析することで、客観的なデータに基づいた改善策を講じることができます。これには、バグの発生率やテストカバレッジなどの指標を用いることが一般的です。
開発プロセス全体を通じて、品質が保証されているかを常に把握することが求められます。これには、定期的なレビューやテストが含まれ、問題が早期に発見されるようにします。
各開発工程ごとにチェックを行い、バグを早期に発見し、作りこみ工程で除去することが重要です。これにより、後工程での修正コストを削減し、品質を向上させることができます。
開発の各段階で、顧客の要求が全て網羅されているかを確認することが必要です。これにより、最終的な成果物が顧客の期待に応えるものとなります。
品質管理は開発チームだけでなく、関連する全ての部署との連携が重要です。これにより、情報の共有がスムーズに行われ、品質向上に向けた取り組みが一貫して進められます。
システム開発における品質管理のポイントは、開発手法によって異なる場合があります。ここでは2つの開発手法(ウォーターフォール型、アジャイル型)に分けて、それぞれの品質管理のポイントを解説します。
ウォーターフォール型開発とは「要求定義」「要件定義」「基本設計」「詳細設計」「プログラミング」「テスト」「リリース」などの開発工程を順番に実施する開発手法です。順序立てて進行するため、品質管理も段階的に行われます。
各工程の終了時のレビューを徹底し、要件や設計が正確に反映されているか確認します。これにより、後工程での手戻りを防ぎます。
特にテスト工程には、単体テスト、結合テスト、システムテストなどさまざまなテストがあります。それぞれのテストで、要件を満たしているかきちんと検証しましょう。
各工程での成果物をドキュメント化し、品質管理の基準を明確にします。これによりプロジェクト全体の透明性が高まり、品質の一貫性を保つことを目指します。
アジャイル型開発は、システムを細かい機能にわけて、短期間で機能毎に開発するサイクルを繰り返す開発手法です。アジャイル型開発における品質管理のポイントは以下のとおりです。
アジャイル型開発は短期間の開発サイクルを繰り返すため、短い期間で頻繁に確認を行なう必要があります。
このため、システム開発の依頼者と開発者が定期的にコミュニケーションを取り、要件の変更や新たなニーズに迅速に対応することが品質向上のポイントです。
アジャイル型開発では開発サイクルを繰り返しながらシステムを開発するため、変更が頻繁に行われたり、コードの統合が多く発生することがあります。
コードの修正・統合時の確認に自動化テストを導入するなどして、開発するシステムの品質維持に努めることが大切です。
これらのポイントを押さえて、ウォーターフォール型とアジャイル型それぞれの開発手法において、効果的な品質管理を実現しましょう。
システム開発の品質管理に関する専門用語や略語を紹介します。
メトリクスとは、システム開発における品質やパフォーマンスを定量的に評価するための指標です。
不具合の発生率やテストカバレッジ(システム全体のなかでテストを実施した網羅率)などを定量化し、開発プロジェクトの品質を客観的に把握するために役立ちます。
トレーサビリティは、システム開発の各工程で生成された成果物や要件が、どのように最終製品に反映されているかを追跡する能力を指します。
これにより、要件が漏れなく実装されているかを確認し、品質を保証することができます。
品質管理責任者は、プロジェクト全体の品質管理を担当する役職です。
品質基準の設定や品質保証活動の計画・実行を行い、プロジェクトの品質を維持・向上させる役割を担います。
PM(プロジェクトマネージャー)は開発チームの役職のひとつで、プロジェクト全体の進行管理を行うとともに、品質管理の責任を負います。プロジェクトの計画、実行、監視、終了までの全てのフェーズで品質を確保するための活動を統括します。
PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)は、組織内の複数のプロジェクトを横断的に支援する部署です。プロジェクト管理の標準化やベストプラクティスの導入を推進し、品質管理の向上に寄与します。
QMO(クオリティマネジメントオフィス)は、品質管理に特化した役職で、品質保証活動の計画・実行を専門的に行います。品質管理のプロセスを監督し、品質基準の遵守を確保します。
QMS(クオリティマネジメントシステム)は、品質管理を体系的に行うための仕組みです。品質方針や品質目標の設定、品質管理活動の実施、品質改善のためのフィードバック方針などを含みます。
PMBOK(Project Management Body Of Knowledge、プロジェクトマネジメントの知識体系)は、プロジェクト管理の手法やフレームワークをまとめたガイドです。品質管理を含むプロジェクト管理の側面について、標準的な手法やプロセスをまとめています。
システム開発の品質管理に関連する主な資格とその概要を説明します。
IT検証技術者認定試験(IVEC)は、ソフトウェアの検証技術に関する知識とスキルを評価する資格です。受験者は、テスト計画の立案、テストケースの作成、テスト実施および結果の分析など、検証プロセス全般にわたる能力を問われます。
品質管理検定(QC検定)は、品質管理の基本的な概念や手法を理解し、実践できる能力を評価する資格です。製造業からサービス業まで幅広い分野で活用されており、品質管理の基礎から応用までをカバーしています。
R-Map実践技術者認定制度は、リスクマネジメントの手法であるR-Mapの実践的な知識とスキルを評価する資格です。受験者は、リスクの特定、評価、対策の立案および実施に関する能力を問われます。
ソフトウェア品質技術者資格認定制度(JCSQE)は、ソフトウェア品質管理の専門知識を評価する資格です。受験者は、品質計画の策定、品質保証活動の実施、品質改善のための手法など、ソフトウェア品質管理に関する幅広い知識を問われます。
JSTQBテスト技術者資格認定は、ソフトウェアテストの国際標準に基づく資格です。受験者は、テストプロセス、テスト管理、テスト技法など、ソフトウェアテストに関する包括的な知識を評価されます。
信頼性技術者資格認定制度(JCRE)は、製品やシステムの信頼性を確保するための知識とスキルを評価する資格です。受験者は、信頼性設計、信頼性試験、信頼性データの分析など、信頼性工学に関する専門的な能力を問われます。
システム開発会社を選ぶ際、その会社の品質管理について確認することをおすすめします。ここでは、品質管理に焦点を当てたシステム開発会社の選び方のポイントを説明します。
システム開発会社の品質管理に関する実績や評判を確認することをおすすめします。過去のプロジェクトでの成功事例や顧客からの評価を調査し、信頼性の高い会社を選びましょう。
開発会社がどのような品質管理プロセスを採用しているかを確認します。具体的な品質管理手法やプロセスが明確に説明されている会社は、品質に対する意識が高いと判断できます。
品質管理に関連する資格を持つスタッフが在籍しているかを確認します。例えば、IT検証技術者認定試験(IVEC)や品質管理検定(QC検定)などの資格を持つスタッフがいる会社は、品質管理の専門知識を有していると考えられます。
プロジェクトの進行状況や品質管理の状況について、透明性のあるコミュニケーションを行っているかを確認します。定期的な報告やミーティングを通じて、進捗状況を共有してくれる会社を選びましょう。
開発プロセスにおいて、テストとレビューがどの程度徹底されているかを確認します。単体テスト、結合テスト、システムテストなど、各フェーズでのテストがしっかりと行われている会社は、品質管理が徹底されています。
システム導入後のサポートやアフターケアが充実しているかを確認します。問題が発生した際に迅速に対応してくれる会社は、長期的なシステムの品質維持のうえでも重要です。
これらのポイントを考慮し、品質管理に優れたシステム開発会社を選びましょう。
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