システム開発の費用は、システムの種類と規模、実装する機能やその数によって大きく変動します。
システム開発会社から提示された見積り金額が適正価格であるか判断するには、費用の変動要因や相場を理解しておくことが重要です。
本記事では、システム開発の外注を検討している経営者・IT担当者向けに、システム開発の費用相場を解説します。適正価格で外注できるためにも、ぜひご参照にしてください。
INDEX 目次
自社が依頼したいシステム開発の費用が把握できるよう、まずはシステム開発の費用内訳と計算方法を解説します。
システム開発の費用内約は、おおきく人件費と諸経費に分けられます。
人件費は、その名の通りエンジニアやプログラマーに支払う費用で、システム開発の費用の約8割を占めます。諸経費は、サーバー維持費やソフトウェアのライセンス料など、システム開発をおこなうために発生する費用です。
いずれの費用も、システム開発の規模や実装したい機能に応じて変動します。では、人件費と諸経費の詳しい内訳と具体的な計算方法を見ていきましょう。
システム開発の人件費は、「人月単価×人数×開発期間」で計算されるのが一般的です。
人月単価とは、システム開発に関わる人材が1ヶ月稼働した場合の費用を意味します。人月単価は役職によって異なり、相場は下記のとおりです。
システム開発に関わるエンジニアと人月単価の相場 | ||
---|---|---|
役職 | 担当業務 | 人月単価 |
PM(プロジェクトマネージャー) PL(プロジェクトリーダー) |
システム開発全体の進捗管理 | 70万~200万円程度 |
SE(システムエンジニア) | 要件定義や仕様書の作成など |
|
PG(プログラマー) | コードの記述 | 40万~80万円程度 |
例えば、人月単価100万円のSEを2人採用し、3ヶ月間稼働させた場合の人件費は、100万円×2人×3ヶ月=600万円と算出されます。
人月単価の相場に幅があるのは、エンジニアのスキルの高さによるものだと思われがちですが、システム開発会社の得意領域やノウハウの蓄積度合いでも変動します。
また、システム開発会社が実際の開発を子会社や関連会社に委託している場合は、委託する分の利幅が上乗せされている可能性があります。
そのため、「人月単価が相場より高い=質の高いシステム開発ができる」とは限りません。実際にシステム開発を依頼する場合は、自社の要望通りに開発してくれるシステム開発会社を選ぶことが重要です。
システム開発における諸経費は、実際に開発するために必要な費用を指します。システム開発で必要な主な諸経費は、以下のとおりです。
上記の諸経費は、依頼するシステム開発会社が使用しているものによって変わります。例えばサーバー代の場合、物理サーバーを用意するシステム開発もあれば、AWS(Amazon Web Service)やMicrosoft Azureなど、クラウドサービスを利用するシステム開発会社もあります。
そのため、システム開発の諸経費を把握するには、システム開発会社に見積もりを依頼することが必要です。
以上、システム開発における費用内訳と計算方法を解説しました。続いては、システム開発の費用相場が変動する要因を解説していきます。
システム開発の費用は、依頼したいシステムの内容に応じて大きく変動します。
システム開発の費用が変動する主な要因は、以下の3つです。
システム開発費用の変動要因を理解しておけば、自社が依頼したいシステム開発の費用感が掴みやすくなるでしょう。では、各要因を1つずつ解説します。
システム開発の費用が変動する1つ目の要因は、開発手法です。同じシステム開発を依頼するにしても、採用する開発手法によって必要な人員や作業工数が異なり、必要な費用も大きく変動します。
システム開発の開発手法は、大きく「パッケージ」と「フルスクラッチ」の2種類に分けられます。
パッケージは、事前に開発済みの機能を組み合わせることで、システム開発を効率良く進める開発手法です。フルスクラッチよりも費用を安くできますが、用意された機能しか使えないため、自社の要望に細かく対応できないのがデメリットです。
フルスクラッチは、ゼロから自社独自のシステムを構築する開発手法です。機能だけでなくデザインまで自社の要望通りに開発できるのがメリットですが、費用は当然ながらパッケージ開発よりも高くなります。
そのため、基本的な機能だけ使いたかったりデザインまでこだわらなかったりする場合はパッケージ開発、自社独自の機能を搭載したかったり使用感にこだわりたかったりする場合はフルスクラッチ開発を選ぶといいでしょう。
システム開発の費用を極力抑えたい場合は、既存ツールを利用するのも1つの手です。
既存ツールなら、必要な機能や使用人数に応じた月額費用を支払うだけで、自社に必要なシステムを利用することが可能です。システム開発を依頼する必要がなく、多額の開発費用を支払わずに済みます。
例えば、顧客管理システム(CRM)で有名なSalesforceだと、月額数千円から営業業務の支援機能が利用できます。
そのため、自社で求めているものが既存ツールで提供されている機能で十分かどうか、一度判断してみてもいいでしょう。
システム開発の費用が変動する2つ目の要因は、実装したい機能です。
実装したい機能の数が多かったり開発難易度が高かったりすると、その分システム開発の費用は高くなります。以下に、ほとんどのシステム開発で実装される機能の費用相場をまとめてみました。
ログイン機能 (メールアドレスのみ) |
10万円~70万円程度 |
---|---|
決済システム (システム構築を含む) |
30万円~300万円程度 |
ユーザー会員の データ管理機能 |
20万円~100万円程度 |
アプリのデザイン | 10万円~100万円程度 |
データ利用 (新規取得) |
50万円~100万円程度 |
他社ツールの実装 | 5万円程度 |
各機能の費用相場に幅があるのは、同じ機能でも実装内容によって変動するからです。
例えば、同じログイン機能でも2段階認証や一定期間のログイン維持など、求める要素に応じて費用が変動します。
システム開発で余計な費用がかからないためには、自社で実装したい機能や仕様を具体的に決めることが重要です。
システム開発の費用が変動する3つ目の要因は、開発規模の大きさです。
開発するシステムの規模が大きいほど、費用は高くなります。
例えば、数人でデータ共有する程度の業務システムであれば、費用相場は数万円〜数十万円程度です。一方、数万〜数百万人単位のユーザーがアクセスするアプリケーションを開発する場合、インフラ環境の構築だけで数百万円〜数千万の費用がかかります。
このように、自社が依頼したいシステム開発の規模に応じて、必要な費用は大きく変動します。
次章では、自社が依頼したいシステム開発の費用感がイメージしやすくなるよう、作業項目ごとの費用相場を解説します。
ほとんどのシステム開発は、以下のような作業工程で開発を進めます。
各作業工程の費用相場は、以下のとおりです。
作業項目ごとの費用相場 | ||
---|---|---|
作業項目 | 費用割合 | 1,000万円のシステム開発を依頼する場合 |
要件定義 | 5〜10% | 50〜100万円 |
設計 | 15〜20% | 150〜200万円 |
実装 | 40〜50% | 400万円〜500万円 |
テスト | 20〜30% | 200〜300万円 |
リリース(デプロイ) | 5〜10% | 50〜100万円 |
上記以外にも、リリース後の運用保守も依頼したい場合は、その分の費用が別途発生します。
実際にシステム開発を依頼する際は、上記の費用相場を参考にして、自社の場合は相場より高いか低いか確認してみてください。
システム開発の費用相場は、開発の種類や実装したい機能に応じて変動します。
システム開発の種類は、大きく以下の4つに分けられます。
以下に、開発手法別で各システム開発の費用相場をまとめてみました。
開発手法別システム開発の費用相場 | |||
---|---|---|---|
開発手法 | 既存ツール | パッケージ +カスタマイズ |
フルスクラッチ |
基幹システム | 月額5万円〜 | 100万円前後 | 500万円前後 |
業務支援システム | 月額5万円〜 | 50〜200万円 | 400万円前後 |
Webシステム | 50〜100万円 | 100〜300万円 | 300万円前後 |
アプリ | 100万円前後 | 100〜500万円前後 | 500〜1,000万円 |
では、各具体例の費用相場を1つずつ見ていきましょう。
基幹システムの費用相場 | ||
---|---|---|
既存ツール | パッケージ +カスタマイズ |
フルスクラッチ |
月額5万円〜 | 100万円前後 | 500万円前後 |
基幹システムとは生産・人事・財務など、企業の資産管理や社内業務(バックオフィス)を効率的に遂行するためのシステムです。
一般的に、販売管理と生産管理は他の業務よりも複雑かつ使用人数が多いため、その分費用相場が高くなります。
特定業務のシステムだけ使いたいなら、既存ツールを利用して費用を抑えることも可能です。各業務を跨いだ独自のシステムを構築したいなら、パッケージのカスタマイズやフルスクラッチによる開発が必要になるかもしれません。
企業によっては、複数業務を組み合わせたシステム開発を依頼する場合もあります。そのため、基幹システムを導入する際は、必要な業務範囲を明確にしておきましょう。
開発手法別システム開発の費用相場 | ||
---|---|---|
既存ツール | パッケージ +カスタマイズ |
フルスクラッチ |
月額5万円〜 | 50〜200万円 | 400万円前後 |
業務支援システムとは、顧客管理・営業活動など売上に関わる業務を管理するシステムです。
特に顧客管理はあらゆる企業で必要な業務なため、さまざまな既存ツールが提供されています。なかには、MA・SFA・CRMを組み合わせたり、必要な機能だけ追加して利用できたりするツールもあります。
自社独自の顧客管理システムを開発したい場合は、機能数や利用人数によって費用は相場よりも高くなります。事前に必要な機能を明確にして、適切な価格でシステム開発を依頼できるようにしましょう。
Webシステムの費用相場 | ||
---|---|---|
既存ツール | パッケージ +カスタマイズ |
フルスクラッチ |
無料〜100万円 | 100〜300万円 | 300万円前後 |
Webシステムとは、インターネットに接続してサーバに構築されたアプリケーションやサービスを利用するシステムです。さきほど紹介した基幹システムや業務支援システムのなかにも、Webシステムとして提供されているものもあります。
Webシステムは既存ツールであれば、最低限の機能かつテンプレートデザインを使えば、月額費用無料で利用することが可能です。追加機能やデザイン変更が必要な場合は、数十万〜100万円程度の費用が発生します。
在庫データや会計データとの連携といった独自機能や自社の世界観を再現したデザインなど、高度なカスタマイズが必要な場合は数百万円以上の費用がかかるでしょう。
Webシステムは顧客が実際に目にするシステムであることが多いので、どこまで機能とデザインにこだわるか明確するのがおすすめです。
スマホアプリの費用相場 | ||
---|---|---|
既存ツール | パッケージ +カスタマイズ |
フルスクラッチ |
100万円前後 | 100〜500万円前後 | 500万円〜 |
スマホアプリとは、AndroidやiPhoneといったスマートフォンにインストールして利用するアプリケーションです。事前のインストールが必要なものの、インターネット環境による「動作の重さ」の弊害を受けにくいメリットがあります。
洗練されたスマホアプリを開発できれば、多くのユーザーを獲得でき、継続的に利用してもらえる可能性があります。
そのため、搭載する機能数・扱うデータ量・デザイン・操作性など、こだわるべき要素が多くなり、実際のところ費用相場に上限はありません。
また、Android OS・iOSごとの開発やアプリストアの審査に通過しなかった場合の修正などの費用も発生します。
そのためスマホアプリを開発するなら、余裕を持った予算確保が必要になるでしょう。
システム開発の費用を抑えるには、以下のポイントを理解しておきましょう。
上記のポイントを自社の可能な範囲で実践すれば、システム開発の費用を抑えられるでしょう。では、各ポイントを1つずつ解説します。
システム開発の費用を安くする1つ目のポイントは、開発したいシステムの機能を具体的に伝えることです。
開発して欲しい機能が明確になっていれば、システム開発会社は必要な開発だけおこなえばいいので、支払う必要のない費用を削減できます。要件定義が明確になるので誤解や仕様変更の発生を防止でき、開発期間の短縮や追加料金の発生リスクを軽減することも可能です。
例えば、下記のように明確にできると、システム開発会社も何を開発すべきかイメージしやすくなります。
具体的なシステム開発のイメージ例 |
---|
入力間違いを防げる受発注管理システムを導入し、チェック作業の時間と人的コストを削減したい |
属人化された顧客情報を一元管理できる顧客管理システムを導入したい |
オンライン・オフライン双方のマーケティングデータを統合・管理できるシステムを構築し、Webサイトからの受注を強化したい |
システム開発会社に依頼する前に、解決したい課題や実現したいことを明確化させ、そのために必要な機能が何か整理しておきましょう。
システム開発の費用を安くする2つ目のポイントは、パッケージを利用することです。
システム開発におけるパッケージとは、ログインやメール送信など頻繁に用いられている機能が事前に用意されたソフトウェアを指します。パッケージ開発では、用意されている機能を自社の要件に合わせてカスタマイズすることで、システムを開発します。
そのため開発工数が削減でき、費用を抑えることが可能です。
ただし、パッケージ開発は特定のニーズに適応することが難しくなっています。自社特有の機能が必要だったりシステム自体が複雑だったりすると、カスタマイズの難易度が上がります。
場合によっては費用が相場よりも高額になったり、業務内容の一部変更を強いられたりする可能性があるのでご注意ください。
システム開発の費用を安くする3つ目のポイントは、段階に分けて開発することです。
最初から必要な機能すべてを実装するのではなく、優先順位の高い機能のみ実装すれば、限られた予算で最低限のシステム開発ができます。実装する機能も減るので、仕様漏れや誤解を防ぐことも可能です。
また、後ほど追加機能を実装する際も、システム開発会社が自社の業務内容の理解度が深まった状態で開発できるので、より理想に近いシステムに仕上げられるでしょう。
そのため、初めてシステム開発を依頼する場合は、欲しい機能の優先順位を付けておくのがおすすめです。
システム開発の費用を安くする4つ目のポイントは、オフショアでの開発を依頼することです。
システム開発におけるオフショアとは、海外のシステム開発会社に自社の依頼を委託することを指します。システム開発の費用の大半は人件費なので、日本よりも人件費が安い海外でシステム開発をすれば、クオリティを維持しながら費用を抑えることが可能です。
ただし、オフショアは海外に委託する分、コミュニケーションの難易度が上がってしまいます。欲しい機能が明確になっていなかったり、依頼先のシステム開発がオフショアの経験が少なかったりすると、想定していたものと全く異なるシステムが納品される可能性があります。
そのため、オフショアでのシステム開発を依頼したいなら、オフショアの実績が豊富なシステム開発会社を探しておきましょう。
システム開発の費用を安くする5つ目のポイントは、補助金を活用することです。政府や地方自治体の補助金を確保できれば、システム開発に使える予算が増えて、実質的に費用を抑えられます。
以下にシステム開発で活用できる主な補助金制度をまとめておきます。
システム開発で活用できる主な補助金制度 | ||
---|---|---|
制度名 | 概要 | 補助金の目安 |
IT導入補助金 | 中小企業・小規模事業者の労働生産性の向上を目的とした、業務効率化やDX等に向けたITツール(ソフトウェア、アプリ、サービス等)の導入を支援する |
最大450万円 補助率:最大2分の1 |
ものづくり補助金 | 中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善するために設備投資等を支援する |
最大5,000万円 補助率:最大3分の2 |
持続化補助金 |
小規模事業者が働き方改革やインボイスなどの制度変更に対応し、持続的な経営を実現するために、必要な販路拡大に関わる経費を一部補助する 通常枠または特別枠(賃金引上げ枠・卒業枠・後継者支援枠・創業枠など)の申請類型、いずれか1つの枠のみ申請可能 |
通常枠最大50万 その他最大200万円 補助率:最大3分の2 |
【出典】
IT導入補助金:IT導入補助金2024
ものづくり補助金:ものづくり補助金総合サイト
持続化補助金:小規模事業者持続化補助金(一般型)
原則、契約前に申請が必要なので、システム開発会社選びと並行して補助金情報を調べておくのがおすすめです。
自社のシステム開発の費用感が把握できたら、以下の要素に沿って依頼するシステム開発企業を選びましょう。
1つずつ詳しく解説していきます。
依頼するシステム開発会社を選ぶ際は、必ず複数社の相見積もりを行いましょう。
開発手法・作業工程・人月単価は、システム開発会社によって異なります。そのため、同じシステム開発を依頼したとしても、システム開発会社ごとに費用・開発期間は変わってきます。
そこで相見積もりを行えば、各社の見積もり内容が比較でき、自社の要望に適した依頼先がどこか客観的に検討することが可能です。
相見積もりの社数は、3〜4社がおすすめです。これ以上増やしてしまうと比較検討に時間がかかってしまい、どのシステム開発会社に依頼すべきか判断しにくくなります。
システム開発会社を選ぶ際は、過去の開発実績も確認しておきましょう。
自社が依頼したいシステムと同じ、もしくは同種の開発実績が豊富な会社に依頼するのが理想です。また、自社と同じ業界の開発実績が豊富なシステム開発会社であれば、自社の業務内容を理解してもらいやすく、認識の齟齬を防止できます。
システム開発の良し悪しは、依頼するシステム開発会社で決まるといっても過言ではありません。自社の依頼内容をしっかり理解してくれるシステム開発会社であれば、より納得できる提案を出してくれるでしょう。
明確な仕様の把握と要件定義、効率的なコミュニケーション、段階的な開発アプローチなどがシステム開発におけるコストを安く抑えるための重要な手段です。
最後に、システム開発の相場費用に関するポイントをまとめておきます。
上記のポイントを押さえれば、適切な費用で自社が求めるシステム開発が依頼できるでしょう。
自社が開発したいシステムの費用相場がどうしてもわからない場合は株式会社マイナビにご連絡ください。予算や目的をヒアリングしたうえで、適切な見積もりを提示します。
詳細な相場感が知りたいや費用の細かい計算方法など、気軽な相談だけでかまいません。ぜひ一度当社にご相談ください。
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